昨年(2015.7月)に、某サイトに寄稿したが掲載されていない(^^; ので備忘録として(^^) ※この時マシンはホコリをかぶった状態だったが、後日、綺麗に拭きあげたということです(^^)

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ずいぶんご無沙汰してしまいました。朝早くからセミの大合唱で起こされ、窓から外を見ると、これでもかってゆう青空が広がっています。今日も暑くなりそう・・・でもこんな日は眠気も吹き飛びなんだかワクワクしてしまいます。バイクに乗ってどこかへぶらーっと出かけたい!そんな衝動に駆られてしまいます。
そうそう、ずーっと「もう一度、見てみたい」って思っていたレーサーがあるんです。アルミフレームのTZ125。多分全日本を走った125ccで、最初のアルミフレームのレーサー、ひょっとしたら125cc世界初かもしれません。当時プレイメイトレーシングで全日本選手権の国際A級125ccクラスに参戦していた奥村裕選手がA級2年目のシーズン、1983年を戦ったゼッケン6のマシンです。前年の1982年は2位と3位が1回づつあり全日本ランキング5位となった奥村選手は大多数のホンダに対し、数少ないヤマハTZユーザーでした。そんな彼がモリワキに依頼して作ってもらった流麗なカーブを持つモリワキ独特のリブ付きアルミフレームとヤマハのレーサーTZ125のエンジンの組み合わせ。この年奥村選手は大苦戦してしまいました。3月27日の第2戦筑波は雨の決勝。リザルトを見ると奥村選手はスタートのみでリタイヤ。4月24日、好天に恵まれた第3戦の鈴鹿は国際A級B級の混走。土曜日の予選、ポールポジションのチーム・カナヤ江崎正選手から5秒7遅れの予選8位。決勝は総合28位完走で、リタイヤを除く完走した国際A級では最下位。第4戦筑波、第5戦SUGOもノーポイントレースが続き、第6戦鈴鹿の予選は4列目14番グリッド。さらに決勝では2つポジションを下げ総合16位と低迷。この予選日のパドックで、コースイン間近の奥村選手に呼び止められました。マシンに跨りエンジンをブリッピングして暖気している彼に近づくと、やおらシートからお尻を浮かし「触ってみて!」一瞬、えっ?って思ったけど、彼のお尻ではなくマシンのシートに手を置いてくれと言うこと。驚いた、さわった左手の指先から、一気に振動が全身に伝わってくる。スロットルを開ければ開けただけ振動が倍加されて伝わってくる。彼は言葉にこそしなかったが、とてもまともにレースを戦える状態にマシンを仕上げることができないで苦戦していることを私に伝えたかったんだろうなぁ。6月26日第7戦の筑波。状況は好転せず、ポールから1.5秒遅れの3列目9番グリッド。決勝はタイトル争いをしているヤマハファクトリーの江崎選手が転倒してしまい、少数派のヤマハTZ(エンジン)としては最上位の5位となったが、優勝したA級ルーキーの栗谷二郎選手から30秒以上遅れてのゴールだった。100分の1秒ノガロレーシングの島正人選手や小沼賀代子選手らをかろうじて抑えてのチェッカーだった。続く第8戦は8月28日のSUGO。予選はシーズン初のフロントロー4位を獲得。といってもポールのディフェンディングチャンピオン一瀬憲明選手から2秒遅れだった。決勝は優勝の一瀬選手にラップされ1周遅れの13位。状況はあまりというかほとんど改善されないまま、9月11日の最終戦、鈴鹿の日本グランプリを迎えた。予選はやはりトップから5秒半遅れ4列目15位。決勝はチェッカーをうけることなく、優勝の山本陽一選手から1周遅れの11周でリザルト上は完走扱いとなった。
まったく不本意なシーズンを消化することになった奥村選手と世界で1台のモリワキアルミフレーム+TZ125エンジンのスペシャルマシン。あのシートに触れた時から32年。いまでも脳天まで突き抜けた、あのバイブレーションを忘れることはできません。きっとライディングしていた奥村選手は、走るたびに脳みそがシェイクされていたのではないだろうか。
昨年、モリワキのスタッフに、このマシンのことを聞いたら、その存在自体を知らなかった若いスタッフ。もちろんモリワキに保存されているはずもなく。もう見ることはできないのかなぁ、私の記憶の中だけのマシンなのかなぁ。結果表だけ見ていると車両名はヤマハTZとしか表記されていないので、アルミフレーム、それもモリワキのなんてわかりません。


先日、サスペンションのメンテナンス、チューニングを始めて20年になる奥村裕さんのショップ、スクーデリア・オクムラに初めて伺った。久しぶりの再会で懐かしい話を取り留めもなくしたが、そのアルミフレームTZって、その後どうしたの?って聞いたら「そこにありますよ」2本作られたフレームのうち1本はもうないけど・・・。ショップに入ってすぐ右手の事務所にあがる階段の上に鎮座してました。少しほこりをかぶっていたけれど、間違いなく、あのマシン。32年ぶりの再会でした。ずーっと、もう一度見たいと思ってたのが、乗っていた本人の所にあったとはついぞ思いもよらないことでした。そんなマシンがあったんだ、見てみたいなぁという方、これが大事なんですが(^^)サスペンションの相談がてら、名古屋市守山にあるスクーデリア・オクムラへ行って見てくださいね。ショップ内にはマツヤランドさんが描いたアルミフレームTZ・ゼッケン6も含めた奥村選手の各年のイラストも飾ってあります。(2015.7.14 記)

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